フランス人パフォーマー
サーカス出身のフランス人パフォーマーの作品『隠された面』を東京・森下スタジオで観ました。サーカスというと、日本では芸術というよりは、どちらかというと見世物小屋の延長のような雰囲気があり、人によってはレトロな郷愁を呼び起こすものでもあるようです。しかし、この26歳のパフォーマーは、アートとしてのサーカスとモダンダンスを融合させているのです。

 ジャン・バティスト・アンドレは1979年フランス・ランス地方で生まれました。シャロン国立サーカス芸術学校を卒業し、アートとサーカス、またはニューテクノロジーと現代美術を横断する舞台の研究、創作を行います。フランスで国立のサーカス芸術学校が存在するように、フランスではサーカスはあくまでアートなのですね。日本のように悪さをした子供に「サーカスに売り飛ばすよ!」と折檻するような、ナマハゲの代用にも江戸川乱歩の世界にも絶対なりえないのです。

 私がジャン・バティスト・アンドレの舞台を観にいこうと思ったのは、やはりサーカス学校出身という経歴からアクロバティックな舞台を期待したこともありますが、サーカスと芸術をどう体現してくれるか、に非常に興味があったからです。彼は白いシンプルな舞台の上で、シャツとジーンズという姿にエンジェルの羽を小道具にして踊ります。高い身体能力を発揮して倒立や側転など取り入れてはいるのですが、それらが流れるような一連の動きの中で表現されているので、ことさら大げさなアクロバットには見えません。青木孝充のミステリアスで繊細な音楽と松本典子のステージをキャンパスに見立てた映像効果もあり、悩める青年の苦悩や二面性のようなものを見事に表現していたと思います。

 今回の来日はフランス外務省のアーティスト支援活動「ヴィラ・メディシス海外派遣プログラム」において、サーカス分野で初めて奨学生に選ばれ、実現しました。山口に一ヶ月滞在制作し、その成果を山口と東京でトータル4日間の公演で発表しました。

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