モンヴィーノワインのグローバリズム化 
 『モンドヴィーノ』は、ワインの世界事情はとてもよく分かる映画です。今は色が濃く、タンニンが滑らかで、果実味あふれたワインが世界の主流で、人気です。その味は世界的な批評家であるアメリカのロバート・パーカー好みの味であり、パーカー方式と呼ばれる100点満点方式の評価が高くなる味です。
 パーカー評価が高いワインは売れるワインになり、トレンドになっているのです。だから世界中の売れ行きに悩んでいるワイン関係者はこの味を求めて、コンサルタントに頼ることになります。
 そのパーカーとツーカーのコンサルタントがミシェル・ロランです。パーカーと同じ47年生まれ。彼は現在世界の主なワインナリーのコンサルタントをしていて「フライング・ワインメーカー」と呼ばれています。映画の中でも「悪いやつほどよく笑う」ヒール役を見事に果たし大活躍。「はい、ここで酸素投入して〜」とか電話で指示を飛ばします。パーカー好みの味で、しかも熟成しなくてもすぐにそこそこ美味しく飲めるワイン作りを指導します。
 つまり、世界中同じ味のワインが違うブランドで売られている、ということで、そのため、値段もつりあがり、消費者にとってはやっかいなグローバリズム化が進んでいる、といえそうです。アメリカのモンダヴィ一族もロランにコンサルティングを依頼しているので、このグローバリズムの象徴として映画のタイトルになったのでしょう。アメリカによるグローバリズム化はワインの領域にまで侵食しているなんて!

テロワール
 一方、テロワールを大切にしてその土地の個性を生かしたワインの作り手たちもいます。
この映画はそうした職人VSテクノロジーといった様相も見せています。テロワールというのは,ある土地の土壌、地勢、気候などを包括した言葉。映画の字幕では「地味」と訳されていました。テロワールを大切にして、熟成を大切にするワイン作りをする親子が映画に登場しますが、これがまた頑固でいいのです。お父さんは熟成して20年後に美味しくなるワインにこだわり、決して妥協しません。娘は地元の大手のワイン会社に勤務していますが、その個性のない、画一的な味にスクリーンで堂々と悪態をつき、「こんな会社半年で辞めてやる」と公言しました。そして、その通り半年後に辞め、「ドュー・モンティーユ」というメゾンを興し、がんばっています。ダーリンことフランス人シェフのロロさんが、その二人が登場するごとに「これがフランス人気質だよ」と苦笑いしていました。

 ワインも人間も個性が大切ですね。ワインのように熟成して、いい味を醸し出す、そんな人間になりたいですね。

ブログランキングに参加しています。クリックしてね