毒殺日記

 高校生の少女が毒殺魔グレアム・ヤングを題材とした本『毒殺日記』を参考にして、母親を毒殺しようとしました。そのニュースを見て、すぐに『毒殺日記』を購入。
学生のころ早稲田大学犯罪学研究会に所属していたミミは犯罪学が大好き。というわけで購入したのですが、この本は連日のテレビでの放送のせいか、アッという間に高騰し、4000円くらいの値が付いているものもあるらしい。ちなみに犯罪学研究会は殺人の方法など研究する怪しい会ではなく、ちゃんと法学部大学院直結の真面目な犯罪学研究会で、年に一度みんなで論文を発表していたくらいです。私は他大学出身ですが、なかなかそういう研究会がないため、早稲田に通っていました。ちゃんと論文も書きましたよ。念のため(連続殺人魔フリークと思われないように頑張って言い訳中)。
 というわけで、ミミの書棚には犯罪関係の本がズラ〜リ。日本語が読めないダーリンことフランス人シェフのロロさんも最近はその傾向に気づいてきたのか、どうもミミを怖がっている様子。
「毒殺日記買ったよ。今人気みたい」とミミ。
「え〜、またそんな本買ったの〜? 怖いよ〜」とロロさん。

 犯罪を犯した高校生は岩本亮平の名前でグルムグンシュというブログを書いていました。グルムグンシュとは、「人間に取り憑いて精気を吸い取る、 残酷で無慈悲な大地の精霊」だそうです。『毒殺日記』を読むと、この少女はグレアム・ヤングに憧れて、その考え方や手口、知性のあり方、発揮の仕方までかなり影響を受けていることが分かります。そして独特のロマンチシズムを感じているようです。ヤングはオスカーワイルドの*『レディング監獄のバラード』をそらで朗読できるほど、普段から自分をその独特のロマンチシズムで飾り立てていたのです。しかし、そのロマンチシズムには冷たく無機質なものしか感じませんが・・・。
 毒に使用したタリウムは毛が抜け、全神経が麻痺し、「自殺したくなる気分にさせる」恐ろしい毒です。その記述はヤングも高校生も観察日記の中で同じように記載されています。そして憎いから殺すのではなく、完全なモルモットとして観察していくのです。
 他人の気持ちを理解しない、感情を理解しようとしない若者がどんどん増えていくのでしょうか? 人間が人間であるには情緒や感情が大切なのでは? 昔、数学者・岡潔小林秀雄の対談集を読みましたが、その二大天才は「感情は理性を上回る」という意味のことを言っていたことを覚えています。
 情緒を知らずして、無機質なロマンチシズムで自らを正当化する傲慢さには、まったく閉口します。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました

*だが人は誰も愛するものを殺す、
 誰もがこのことを聞きおくがいい。
 ある者は苦渋の色を浮かべ、
 ある者はお世辞を並べつつ。
 臆病者は接吻によりて
 勇者は剣によりて愛するものを殺す。