あうん

 立川志らく脚色・演出で向田邦子の『あ・うん』を神楽坂Theatre Iwatoで観た。志らくの落語は縁あって何回か生で聴いたことがあるが、芝居は初めてだった。
志らくは天才肌の落語家だと思う。落語を聴くたびに見事だなあ、と思う。頭の回転、演技、エスプリ、スピード感において凡人ではないなあ、と思わせる。しかし、いつも何かが足りない、と思ってしまう。その何か、とは? たぶん、天才が鼻につくところ、だと思う。才が目立ちすぎるのだ。しかし、それは年齢が解消してくれそうな気がする。今40歳くらいだから、これから、どんどん味が出てきて、落語がまろやかになっていくような気がして楽しみだ。
 ところが、その鼻につく天才が芝居では感じられないのだ。本当の芝居好きが一所懸命やってる、という感じがした。それが返って好印象で、芝居はとても面白かった。向田邦子の原作を尊重し、所々志らくらしいギャグが挿入されているので、原作の感動はそのままに、長い芝居のオアシスとして笑わせているので、とてもバランスがよかった。だから、床に小さな座布団という席で満席のすし詰め状態でも2時間半耐えられたのだと思う(ほとんどの人が体育座り状態)。
 『あ・うん』は狛犬の口を開けているほうが「あ」で閉じているほうが「うん」ということからきている。子供のころ神社を父と散歩したとき、子供ながらに口を開けているほうの狛犬を恐い、と思った。そこで父に「口を開けているほうが強いね」と言ったところ、
「口を開けているほうが弱いんだよ。弱いからすぐ吠える。閉じているほうが本当は強いんだよ」と父が言っていたのを印象強く覚えている。今になってみると、その意味が本当によくわかる。
 ダーリンことフランス人シェフのロロさんにキャンキャン吠えるのはやめよっと。計画立てないでのんびりしているのは、ラテンの血のせいなのよね。でも出発時間になってからトイレ行ったり、急いでいるのに猫と遊んでいるのはやっぱり腹立つけど・・・。

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